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埼玉県予防接種センターだより (No 2014-5)

◎予防接種情報◎

◆B型肝炎ウイルス母子感染予防のための新しい指針

日本小児科学会、日本小児栄養消化器肝臓学会、日本産科婦人科学会が要望して、B型肝炎ウイルス母子感染予防処置が変更された1)。この新しい方式により、生後2か月の抗HBs人免疫グロブリン(以下HBグロブリンと略す)注射を省くことができ、また予防処置の不徹底による母子感染を防止できると期待される。

HBs抗原陽性の母親から出生した児に対し、原則として以下の感染予防処置を行う2)。
① 出生直後(12時間以内が望ましいが、もし遅くなった場合も生後できる限り早期に行う)

通常は、HBグロブリン1mL(200単位)を2か所に分けて筋肉注射し3)、B型肝炎ワクチン(以下HBワクチンと略す)0.25mlを皮下注射する4)。
② 生後1か月 HBワクチン0.25mL皮下注射
③ 生後6か月5) HBワクチン0.25mL皮下注射

生後9~12か月を目安にHBs抗原とHBs抗体検査を実施6)

HBs抗原陰性かつHBs抗体≧10mIU/mL・・予防処置終了(予防成功と判断)
HBs抗原陰性かつHBs抗体<10mIU/mL・・HBワクチン追加接種
HBs抗原陽性・・・専門医療機関への紹介7)(B型肝炎ウイルス感染を精査)

標準的なHBワクチン追加接種

HBワクチン0.25mL皮下注射を3回接種(接種時期は、例えばHBs抗原陰性かつHBs抗体<10mIU/mLを説明した際、さらに1か月後、6か月後6)

追加接種終了の1~2か月後に再度、HBs抗原とHBs抗体検査を実施6)

HBs抗原陰性かつHBs抗体≧10mIU/mL・・追加接種は終了(予防成功と判断)
HBs抗原陰性かつHBs抗体<10mIU/mL・・無反応例と判断し専門医療機関へ紹介
HBs抗原陽性・・・専門医療機関への紹介7)

脚注番号の注意事項
1) 2013年10月18日の厚生労働省薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会で公知該当性が了承され、健康保険適用となった。ただし、HBワクチンとHBグロブリンの添付文書は現在改訂中である。
2) 本指針を用いる場合には、保護者の十分な理解を得る事が望ましい。

3)母親がHBe抗原陽性のキャリアの場合は、従来、生後2か月時にもHBグロブリンの 追加注射をしていたが、新しい方式では原則として行わない。
4)出生直後は多様な疾病の罹患リスクが高いので、紛れ込み事故による有害事象の報告 が増加する可能性がある。各事象とワクチン接種の因果関係を十分に検討する必要が ある。
5)3回目のHBワクチン接種は、4種混合ワクチンなどと同時接種を行える。
6)HBs抗原検査には、EIA法、CLIA法、CLEIA法、HBs抗体検査にはEIA法、RIA 法など高感度の検査法を使用することが望ましい。
7)B型肝炎ウイルスの母子感染が確認された場合には、母親に自責の念等が発生しないよ う精神的な支援を行う。児に対して専門医療機関で定期的に肝機能検査を行う必要 があること、肝機能異常が持続する場合には抗ウイルス療法を行う場合があること、治療方法は急速に進歩しており、患児の将来に対して強い不安を抱かないことを指導する。

<全般的な留意事項>
・分娩前に、HB グロブリンとHB ワクチンについて保護者にあらかじめ説明し、同意を得ておくことが望ましい。
・母親がB 型肝炎ウイルスキャリアであっても、「ここに記した児の感染予防処置を行えば、母乳哺育を含めた通常の育児が可能である」旨の指導を行う。
・なお、この指針は今後の状況によっては改訂されることがある。



◆ワクチン接種率について

日本における定期予防接種は、2006年度から原則麻疹風疹混合(MR)ワクチンを用いて、第1期(1歳児)、第2期(小学校就学前の1年間)の2回接種を実施している。2008年度から、第3期(中学1年相当年齢の者を対象)あるいは第4期(高校3年相当年齢の者を対象)として2回目の接種を行っていたが、この制度は2012年で終了した。

 2012年度の麻疹風疹混合ワクチン(麻疹、MR)の全国接種率(第1期は2012年10月1日現在の1歳児の数、第2~4期は2012年4月1日現在の各期の接種対象年齢の者を母数とする)は第1、2、3、4期それぞれ98%(2011年度は95%)、94%(同93%)、89%(同88%)、83%(同81%)で、第1期は目標の95%以上を3年連続で達成した。しかし、2013年度上半期の第2期の接種率は36都道府県で2012年度の上半期を下回っている。

◆第9回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会

今年10月から定期接種化が予定されている小児の水痘および高齢者への23価肺炎球菌多糖体ワクチン(PPSV23)の予防接種法上の接種要領,長期療養特例などに関する審議が行われた。

高齢者のPPSV23接種歴の確認「かかりつけ医への相談含めるべき」
厚労省事務局はPPSV23の接種時に,5年以内の再接種による局所副反応の増強を回
避するための対応として,

①接種の際,医療機関で被接種者に過去5年以内の同ワクチン接種歴がないかを確認すること,
②市区町村は接種歴の管理の他,医療機関や住民からの問い合わせに応じること―などの項目案を提示,審議を求めた。

免疫機能異常を含む,長期療養を必要とする疾患などの理由で定期接種の対象年齢で接種が行えなかった者への特例措置(長期療養特例)についても審議が行われた。水痘ワクチンの長期療養特例期間はその他の小児定期接種ワクチンと同様,接種不適当要因が解消した時点から2年との案が示された。日本脳炎や麻疹,風疹と同様「罹患歴や予防接種歴がない場合はどの年齢でも感染リ
スクがある」との理由で上限年齢は設けられていない。

PPSV23については,接種不適当要因の解消から1年との案が示された。

◆平成26年度インフルエンザHAワクチン製造株が決定されました。

A/カリフォルニア/7/2009(X-179A)(H1N1)pdm09
A/ニューヨーク/39/2012(X-233A)(H3N2)
B/マサチュセッツ/2/2012(BX-51B)
H3N2が変更になりました。

 

 

◎感染症情報◎

◆麻しん患者の増加について(情報提供及び協力依頼)

麻しん患者の届出数は、平成26年第1週から第14週までに253例(4月9日現在)あり、昨年1年間の累積届出数(232例)をすでに上回りました。予防接種歴がない又は不明な方の感染報告が全体の約8割を占め、患者年齢では、特に1期の定期予防接種を開始する前の0歳児(30例)、及び予防接種歴のない1歳児(23例)に多く報告が見られています。

 医療関係者の皆様におかれましては、地域での麻しんの発生動向に留意いただき、適宜、住民の方々に対する情報提供や注意喚起及び麻しん発生時の発生の届出や予防対策等の適切な対応を宜しくお願いします。

【参考資料】
感染症発生動向調査 2014 年第 14 週:速報グラフ(国立感染症研究所感染症疫学センター)
http://www0.nih.go.jp/niid/idsc/idwr/diseases//meas14-14.pdf

◆IDWR 2014年第14週(第14号):ヘルパンギーナやインフルエンザなどについて(2014年4月18日発行)

ヘルパンギーナの定点当たり報告数は2週連続で増加しています。
また、インフルエンザの定点当たり報告数は第10週以降減少が続いています。
A型肝炎は例年に比べて報告数が増加(260例)していますが、1週間当たりの患者報告数は第10週(48例)をピークには減少傾向(第14週 12例)にあります。

IDWR(感染症発生動向調査 週報)2014年第14週(第14号)
http://www.nih.go.jp/niid/ja/idwr-dl.html




◆今冬のインフルエンザ発生動向(2013/14シーズン)のまとめです。

◉インフルエンザ定点サーベイランスにおいて、流行開始時期は12月中旬で例年並みであった。ピークの時期は1月末~2月初頭で、過去3シーズンとほぼ同じであり、ピークの高さは過去3シーズンの中間で、昨シーズン並みであった。定点報告を元にしたインフルエンザ流行レベルマップの情報からは、2013/14シーズンの流行が第10週時点でも継続していることが示唆される。累積の推計受診者数は前シーズン程度だが、15歳未満の割合が前シーズンより多く、全体の半数以上を占めていた。

◉インフルエンザ病原体サーベイランスにおいて、2013/14シーズン*(*2014年3月11日現在報告)は、2013年第52週(2013年12月23日~12月29日)まではAH3亜型が主流であったが、2014年第1週以降はAH1pdm09が主流となった。旧AH1亜型(ソ連型)は2009/10シーズン以降全く報告されていない。B型については、2014年第3週(2013年1月13日~1月19日)からはAH1pdm09に次いで、B型の検出割合がAH3亜型より増加した。山形系統とビクトリア系統とが検出されており、その割合は約2:1である。抗インフルエンザ薬耐性株検出の状況については、AH1pdm09は2011/12シーズンが0%、2012/13シーズンが1.8%であった状況と比較して、2013/14シーズンはこれまでに5%であり、北海道地区に多い検出状況となっている。

◉インフルエンザ入院サーベイランスにおける入院患者数は、70歳以上の報告症例数の減少が目立つ一方、15歳未満においては、昨シーズンよりも若干報告症例数が増加している。入院患者数の推移は、今シーズンのピークのレベルは2011/2012シーズン、2012/13シーズンと比べると低いが、 入院患者における入院時の医療対応は、2013/14シーズンについては、各年齢層においてICU利用と、人工呼吸器利用が、2011/12シーズン、2012/13シーズンと比べて高い割合を示している。

◉インフルエンザ様疾患発生報告(学校サーベイランス)における、今シーズンの休業施設数のピークは、前2シーズンと同じく第5週であった。今シーズンの延べ休業施設数は、前シーズンより多かった。

◉血清疫学調査(感染症流行予測調査)における、2013/14シーズン前の抗体保有状況は、A(H1N1)pdm09亜型、A(H3N2)亜型、B型(山形系統)では5歳から20代の年齢層で抗体保有率が高い傾向がみられたが、B型(ビクトリア系統)では30代後半で最も高い抗体保有率であった。また、0-4歳群はいずれの調査株に対しても30%未満の低い抗体保有率であった。65歳以上の年齢群は60-64歳群と比較して抗体保有率が高い傾向がみられた。

【今冬のインフルエンザ発生動向(2013/14シーズン)】

 

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/fludoco1314.pdf

 



◆梅毒の報告数が増えています

梅毒について、感染症法に基づく平成25年の累積届出数は1,226例でした。この届出数は、平成22年の621例と比較して約2倍となっており、増加が顕著です。
国立感染症研究所においては、以下リンク先のとおり、梅毒の発生動向・感染経路等について報告していますので参考に御覧ください。
増加しつつある梅毒-感染症発生動向調査からみた梅毒の動向-(IASR Vol.35 p.79-80:2014年3月号)国立感染症研究所
http://www.nih.go.jp/niid/ja/syphilis-iasrd/4497-pr4095.html
梅毒は、感染症法上、全数届出が必要な5類感染症(7日以内に届出)です。
医療機関においては、梅毒の診断をした際は、7日以内に最寄りの保健所へ届出をお願いします。
また、性感染症に係る受診の機会を捉え、性感染症の予防に関する啓発を引き続きお願いします。

〈【事務連絡】梅毒の発生動向について(平成26年4月30日)〉
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/260430-01.pdf



◆野生型ポリオの国際的拡大のリスクに関してWHOが声明を出しました(2014年5月5日)

現在、10か国(アフガニスタン、カメルーン、赤道ギニア、エチオピア、イラク、イスラエル、ナイジェリア、パキスタン、ソマリア、シリア)で野生型ポリオが発生していますが、このうち3か国から野生型ポリオウイルスが持ち出されている(パキスタンからアフガニスタン、シリアからイラク、カメルーンから赤道ギニア)ことが確認されました。
このような状況を受けて、WHOの緊急会議が開催され、5月5日にWHO事務局長は声明を出し、2014年における野生型ポリオウイルスの国際的な拡大は国際的な公衆衛生上の脅威となる事象(PHEIC)であると宣言しました。同声明では、これら野生型ポリオが発生している10か国に対して必要な措置をするよう勧告しています。
同声明については下記の検疫所ホームページで情報提供をしておりますので、詳細はこちらをご覧ください。
医療機関の皆さまにおかれましては、これら10か国へ渡航される方が受診された場合、情報提供へのご協力をお願いいたします。

<検疫所ホームページ>
野生型ポリオの国際的拡大のリスクに関してWHOが声明を出しました
http://www.forth.go.jp/topics/2014/05071601.html

野生型ポリオの国際的拡大に関する国際保健規則(IHR)緊急委員会会議でのWHO声明
http://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2014/05071419.html

<WHOホームページ(声明の原文)>
WHO statement on the meeting of the International Health Regulations Emergency Committee concerning the international spread of wild poliovirus http://www.who.int/mediacentre/news/statements/2014/polio-20140505/en/



◆IDWR 2014年第17・18週(第17・18号):咽頭結膜熱などについて(2014年5月16日発行)

咽頭結膜熱、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎、感染性胃腸炎、百日咳、ロタウイルス胃腸炎の定点当たり報告数がそれぞれ3週連続で増加しています。また、水痘の定点当たり報告数が2週連続で増加しています。
IDWR(感染症発生動向調査 週報)2014年第17・18週(第17・18号)
http://www.nih.go.jp/niid/ja/idwr-dl.html




以上の情報は厚労省の感染症エクスプレスなどを参考にしています。
行政・法律の問い合わせ先
☆~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・
埼玉県さいたま市浦和区高砂3-15-1
 埼玉県保健医療部疾病対策課
 感染症・新型インフルエンザ対策担当
 TEL: 048-830-3572 ,3557 FAX: 048-830-4809
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~~・~・~・~・~・~・~・

文責・市町村予防接種担当者・医療機関向け医療保健相談
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埼玉県さいたま市岩槻区馬込2100 埼玉県立小児医療センター内
 埼玉県予防接種センター長  川野 豊(予防接種医療相談)
 TEL:048-758-1811  FAX:048-758-2626
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